前回までの4回シリーズで「外注による開発」を中心にお伝えしてきましたが、読者の方から「内製化も検討したいが、どうすれば?」というご質問をいただきました。今回は番外編として「内製化支援」という第3の選択肢についてご紹介します。
🤔 「完全外注」と「完全内製」の間にある選択肢
従来の二択の課題
完全外注
全てを開発会社に依存
継続的なコスト・ベンダーロック
完全内製
全てを自社で賄う
高い初期投資・技術リスク
第3の道:内製化支援
段階的内製化
専門家の支援を受けながら徐々に内製化
リスクを抑えながらノウハウを蓄積
🛠 内製化支援とは何か?
基本的な考え方
「釣った魚をもらうより、釣り方を教わる」
従来の開発委託では、完成したシステムを納品して終了。しかし内製化支援では、自社でシステムを開発・運用できる体制作りをお手伝いします。
具体的な支援内容
基盤構築支援(3〜6ヶ月)
- 開発環境の構築指導
- 技術選定のアドバイス
- 基本的なシステム設計の指導
共同開発(6〜12ヶ月)
- 最初のシステムを一緒に開発
- 実践的な技術指導
- 開発プロセスの確立支援
自立化支援(3〜6ヶ月)
- 自社での開発・運用をサポート
- 困った時の技術相談
- 段階的な支援縮小
💰 3つの選択肢:費用構造比較
完全外注
200〜500万円
60〜300万円
380〜1,400万円
内製化支援
おすすめ
150〜300万円
200〜400万円
50〜150万円(減少)
500〜950万円
完全内製
100〜200万円
800〜1,200万円
2,500〜3,800万円
📊 内製化支援のメリット・デメリット
メリット
💡 バランスの良いコスト
完全外注より長期的に安価、完全内製より初期投資が低い
🛡️ リスクの分散
専門家のサポートで技術リスク軽減、段階的移行で失敗リスク最小化
🎓 確実なノウハウ蓄積
実践を通じた技術習得、自社の業務に特化したスキル構築
🚀 柔軟な拡張性
自社の成長に合わせた機能追加、外部依存からの脱却
デメリット
⏰ 時間がかかる
自立までに1〜2年必要、即効性は期待できない
👥 社内リソースが必要
専任または兼任の担当者確保、継続的な学習意欲が必要
🔧 技術的責任の移転
最終的には自社で技術的判断が必要
🎯 どんな企業に向いている?
内製化支援が向いている企業
中長期的な視点
3〜5年スパンでの投資計画、持続的な成長を目指している
学習意欲の高い人材
IT技術への興味・関心、新しいことに挑戦する文化
予算に余裕
年商30億円以上が目安、IT投資への理解がある経営陣
業務の標準化
業務フローが明確、属人化していない体制
向いていない企業の特徴
- すぐに効果を求める(短期的なROIを重視)
- IT人材の確保が困難(技術への関心が低い組織)
- 予算制約が厳しい(初期投資を抑えたい)
- 学習時間の確保が困難
💡 成功事例:実際の導入パターン
パターン1:段階的スキル向上型
地方学習塾(15校舎)
2年間
年間200万円削減
成功要因
- 明確な目標設定(2年での自立)
- 専任担当者の確保
- 経営陣の継続的サポート
パターン2:既存人材活用型
個別指導塾(8校舎)
1.5年間
効率化+独自開発
成功要因
- 既存人材の適性を正しく評価
- 業務時間内での学習時間確保
- 小さな成功の積み重ね
⚠ 失敗を避けるための注意点
よくある失敗パターンと対策
人材の途中退職
キーマンが辞めて開発がストップ
✅ 複数名でのスキル習得
✅ 適切な評価・待遇の確保
技術習得の遅延
予定より習得に時間がかかる
✅ 現実的なスケジュール設定
✅ 段階的な目標設定
経営陣の理解不足
途中で投資を打ち切られる
✅ 定期的な進捗報告
✅ 小さな成果の可視化
成功のための3つの条件
経営陣のコミット
長期的な視点での投資判断、人材育成への理解
適切な人材選定
技術への興味・適性、継続的な学習意欲
現実的な目標設定
段階的なスキル習得、無理のない開発スケジュール
📚 今月のコラム
「魚を与えるか、釣り方を教えるか」
「魚を与えれば一日食べられるが、釣り方を教えれば一生食べられる」という言葉があります。
システム開発の世界でも、同じことが言えるのではないでしょうか。
完成したシステムを納品する(魚を与える)のは確実で早い方法です。でも、それだけでは「次の魚が欲しくなったら、また同じところに頼む」ことになります。
一方、釣り方を教える(内製化支援)は時間がかかり、最初は失敗もあります。でも、一度覚えてしまえば、自分で魚を釣り続けることができます。
どちらが正解というわけではありません。「今すぐ魚が欲しい」なら前者、「将来的に自分で釣れるようになりたい」なら後者です。
大切なのは、両方の選択肢があることを知った上で、自社に最適な道を選ぶことです。
私たちは「魚を渡すプロ」でもあり「釣り方を教えるプロ」でもあります。どちらがお客様にとって最適かを一緒に考えることから始めたいと思っています。